主な神経難病
パーキンソン病
脳の神経異常によって脳からの指令がうまく伝わらなくなる病気です。身体がうまく動かなくなり、表情や声、気分などにも影響が及ぶことがあります。
幅広い年代で発症しますが、40歳代に症状が現れはじめ、50~60歳代で診断されるケースが多くなっています。
症状
主な症状には、理由なく手足が震える、前傾姿勢で歩幅が狭く手の振りがない歩行などがあります。
固縮による関節の曲げ伸ばしの支障、表情の硬さ、声が小さくなり言葉も減るなどが起こることもあります。また、気持ちの落ち込みなどが現れる場合もあります。
治療
効果が期待できる薬の種類は多いのですが、患者様の状態や症状などにきめ細かく合わせた処方が必要であり、治療には専門性の高い知識と治療経験が必要です。
当院では、適切な検査を行った上で総合的に判断して診断し、患者様に合わせた治療を行っており、高度医療機関と連携した治療も可能です。疑わしい症状がありましたら、気軽にご相談ください。
多発性硬化症
神経線維の軸索を囲む髄鞘が破壊される病気です。こうした脱髄疾患はいくつかありますが、多発性硬化症は原因がわからない場合に診断されます。
症状
多発性硬化症では、眼球がうまく動かない、視覚障害、動作がスムーズにできない、筋力低下、言葉が出にくい、排泄障害などが生じ、こうした症状は現れたり消えたりを繰り返します。
治療
治療は主に対症療法を行い、症状が現れている活動期には炎症を抑えるステロイドによる治療が中心になります。
症状が消えている寛解期には、症状の再燃予防のための免疫調整薬(インターフェロンやフィンゴリモドやフマル酸ジメチルなど)を使った治療を行います。同時にリハビリテーションで運動機能の改善を図ります。
当院では、上記の治療が可能であり、注射薬や内服薬による治療を行っています。また、高度医療機関と連携した治療も可能です。
重症筋無力症
免疫システムの異常によって、自分の細胞を攻撃してしまう自己免疫疾患です。神経の指令が筋肉にうまく伝わらなくなって全身の筋力が低下します。原因はまだ完全にはわかっていませんが、胸腺異常が関与しているケースがよく見られます。
筋力が低下することで、軽い動作でも疲労困憊してしまい、筋肉が動かなくなってしまいます。少し休むとまた動けるようになりますが、その際にもすぐに疲れ切ってしまいます。
症状
初期には症状が夕方以降に重くなっていきます。まぶたを開けにくい、物が二重に見える、嚥下(飲み込み)がうまくできず食事中にむせやすい、話しにくいなどの症状を引き起こします。
進行すると全身の筋肉へ影響が広がって、肩を上げにくい、スムーズに立ち上がれないといった症状が現れはじめます。こうした症状がありましたら、早めにご相談ください。
治療
治療は症状を緩和する対症療法が主に行われ、ステロイド薬、免疫抑制薬、抗コリンエステラーゼ薬などが使用されます。胸腺の異常が確認された場合には胸腺や周囲の脂肪を切除する手術が検討されます。この手術は根本的な症状軽減の効果を期待できます。
この病気は、症状にきめ細かく合わせた治療が必要であり、合併症や副作用に十分な注意が必要であることから、専門性の高い診療が不可欠となります。
当院では専門医による診断と治療を行っており、手術が必要な際には連携している高度医療機関をご紹介し、術後のフォローアップも行っていますので、安心してご相談ください。
ALS(筋萎縮性側索硬化症)
全身の運動神経が萎縮していく進行性の疾患で、原因はまだわかっていません。
症状
手足の麻痺、ろれつが回らない、嚥下障害などが少しずつ進行し、呼吸障害が現れた場合には人工呼吸器が必要になります。
治療
根本的な治療法がなく、身体障害の支援制度や介護保険など公的制度をしっかり利用し、生活をサポートする体制を整えることが不可欠になります。
なお、進行を遅らせる限定的な効果が期待できる薬として、内服薬のリルゾールと点滴薬のエダラボンが厚生労働省の認可を受けています。適応するかどうかの診断には酵素医療機関の受診が必要になりますので、連携高度医療機関をご紹介しています。
多系統萎縮症
遺伝性ではない脊髄小脳変性症の総称で、オリーブ橋小脳萎縮症・線条体黒質変性症・シャイ・ドレーガー症候群があり、それぞれ主な症状の内容が異なります。
オリーブ橋小脳萎縮症の症状
起立歩行時のふらつきなど
線条体黒質変性症の症状
動作が遅い・手足のこわばり・転びやすいなど
シャイ・ドレーガー症候群の症状
立ちくらみ・失神・尿失禁などを起こします。
多系統萎縮症の症状
神経障害が異なった部分に現れ、進行の順番も変わっていきますので、症状の現れ方にも違いが生じます。ただし、進行するとこうした症状が全て重複して現れるようになります。
排尿・消化管・体温調節・呼吸・性機能・睡眠など、幅広い機能が障害されることがありますが、軽度の場合にはご本人や周囲も発症に気付かないケースが珍しくありません。
治療
原因不明で根治に導く治療法はありませんが、できるだけ早く診断を受け、機能の維持や改善に効果が期待できる薬物療法、生活指導、リハビリテーションを行い、筋萎縮や関節拘縮を予防することが重要です。
ギラン・バレー症候群
脳や脊髄から全身の隅々まで広がっている末梢神経が障害され、手足の麻痺などを生じる疾患です。
症状
ウイルスや細菌の感染が発症に関与しているとされており、喉の炎症や胃腸炎などの症状が起きた後で発症することが多くなっています。
治療
ギラン・バレー症候群は、発症後数日で手足が動かなくなることもあり、早期に適切な治療を開始することが重要です。
原因はまだよくわかっていませんが、本来は外敵を攻撃する免疫が自己の末梢神経を攻撃することで発症します。正常な抗体を大量に点滴する免疫グロブリン大量静注療法、神経を障害している抗体を取り除く血漿浄化療法などによって免疫を正常に戻す治療が可能です。
この病気は、ダメージが及んでいる範囲によって回復スピードが変わります。
短期間に治りやすい髄鞘にダメージがとどまっている場合には速い回復が見込めますが、治るまでに長期間かかる神経軸索突起にダメージが及んでいる場合は回復に時間がかかります。
慢性炎症性脱髄性多発神経炎
末梢神経に炎症が生じて筋力低下、感覚障害などが生じる疾患です。少しずつ進行していくタイプと、再燃と寛解を繰り返すタイプに分けられます。自己免疫疾患であることはわかっていますが、はっきりとした原因はまだわかっていません。
症状
手足にうまく力が入らないようになって、ボタンのかけ外し、箸を使うといった動作が困難になることがあります。
バランスを崩して転倒しやすい・ふらつく、手足の感覚が鈍るなどの症状が現れる場合があります。また、言葉が出にくくなる、表情が乏しくなるなど脳神経障害が起こることもあります。
治療
炎症を抑えるステロイド薬を中心に、免疫グロブリン療法、血液浄化療法などが行われ、リハビリテーションも重要になります。
状態によっては、歩行を補助する装具が必要になる場合もあります。長期間に渡る治療が必要な病気ですので、当院では親身なサポートやケアを心がけています。
大脳皮質基底核変性症
典型的な症状がなく、パーキンソン病のような症状や、大脳皮質が障害された際に出る症状が出るなど、専門医でなければ正確な診断の難しい疾患です。前頭葉と頭頂葉に強い萎縮が生じ、神経細胞の脱落や神経細胞・グリア細胞内の異常構造などが生じています。
症状
代表的な症状には、動作が遅くなる、手足のこわばり、転倒しやすい、スムーズな動きができない、手をうまく動かせない、言葉が出にくい、片側の空間を認識できないなどがあり、認知症の症状が生じることもあります。
また、身体の左右どちらかに強い症状が出やすい傾向があります。40歳以降に発症リスクが上昇しはじめ、発症のピークは60歳代とされています。
治療
根本的な治療法はなく、パーキンソン症状があればパーキンソン病の治療薬を使い、手足の細かい痙攣がある場合にはクロナゼパムを処方するなど、症状に合わせた治療を行い、筋力低下を防ぐためのリハビリテーションも重要になります。
なお、嚥下(飲み込み)に問題がある場合には、状態に合わせたケアや対策、トレーニングなども必要になります。