頭部を打ってしまったら
頭を強くぶつけた場合、脳に損傷が及んでいる可能性があります。脳はとても柔らかい組織ですから、出血、コブ、骨折などの外傷がなくても、伝わった衝撃によるダメージを受けることがあります。
頭部打撲で脳にダメージが及んでいる場合、直後には特に目立った症状がなくても一般的に1時間程度で症状が現れます。ただし、衝撃によって細い血管が切れて少量ずつ出血しているケースでは、6時間程度経過してから症状が現れることが多いとされています。さらに、12時間後、24時間後までは変化が見られないか慎重に観察し、異変を感じたらすぐに受診してください。また、高齢者では数日経過してから症状が現れるケースも存在します。
頭を強く打った場合は、2~3日安静を心がけて注意深く過ごし、出血を起こしやすくする入浴や飲酒は控えるようにしてください。
このような症状は
ありませんか?
頭部外傷や頭部打撲など、頭部を打った後で下記のような症状がある場合には、できるだけ早く脳神経外科を受診する必要があります。当院では経験豊富な脳神経外科専門医が診療を行っており、頭部外傷や頭部打撲の診療も行っていますので、ご相談ください。
- 身近な方から見て、いつもと様子が違う
- 元気がない・ぐったりしている
- 物が二重に見える
- 焦点が定まらない
- 頭がぼんやりする
- すぐに眠ってしまう
- 痙攣がある
- 今まで経験のない頭痛がする
- 嘔吐を繰り返す
- 手足のしびれ
- 手足の脱力
など
頭部外傷後に
発症の可能性がある疾患
急性硬膜下血腫
頭蓋骨の下には、層になった膜があって、その下に脳があります。最も外側にあるのが硬い膜である硬膜です。急性硬膜下血腫では、脳の血管からの出血が硬膜の内側にたまって血の塊である血腫ができています。この血腫が脳を圧迫することで、症状を起こします。重症の場合には、麻痺や意識障害を起こすこともあります。原因は主に、頭部へ受けた強度の外傷であり、血腫を除去する手術が必要になるケースもあります。
急性硬膜外血腫
頭蓋骨と硬膜の間にある中硬膜動脈から出血して生じます。頭蓋骨と硬膜の間に出血がたまって血腫になっています。こちらの原因も主に頭部へ受けた強度の外傷であり、外傷を受けた際に意識を一時的に失うケースもありますが、直後には目立った症状を起こさないこともあります。ただし、数時間後に頭蓋内圧亢進症状である強い吐き気や頭痛、意識障害を起こします。出血量が多い場合には、緊急手術を行います。
外傷性くも膜下出血
硬膜のさらに内側は、くも膜があり、その内側にはくも膜下腔という空間があります。頭部に受けた打撲などの強い衝撃によってくも膜下に出血を起こしているのが、外傷性くも膜下出血です。無症状の場合もありますが、頭痛や吐き気、痙攣、麻痺などを起こすこともあります。動脈瘤破裂によるくも膜下出血は命に関わることも珍しくない危険な病気ですが、外傷性のくも膜下出血は、それほど強い症状を起こすことはほとんどなく、手術が必要になるケースもまれです。
脳浮腫
脳の血管が破綻すると血液が漏れ出して、脳の水分が増加し、むくんだ状態(浮腫)になります。頭蓋内は余分な隙間がなく、硬い頭蓋骨で覆われていますので、脳がむくむと脳圧が上昇し、頭痛、吐き気・嘔吐、意識障害などの症状を起こします。MRI検査で脳の状態を正確に把握し、状態に合わせた治療を行います。程度によっては、開頭手術によって脳圧を下げることも検討されます。
脳挫傷
強い衝撃を受けて、脳が頭蓋骨に激しくぶつかることでダメージを受けた状態です。出血や浮腫などを伴うことも多く、時間経過によってダメージの範囲が拡大していきます。脳機能低下、てんかん発作、錯乱などの症状を起こすこともあり、感情コントロールが難しくなるなど、ダメージを受けた場所や程度により様々な症状を起こします。MRI検査で脳の状態を正確に把握し、脳波をとり、状態に合わせた治療を行います。浮腫や出血の程度によっては手術を行うこともあります。
脳震盪
強い衝撃によって脳が頭蓋内で揺れ動き、一時的に意識障害、めまい、耳鳴り、頭痛と言った症状を起こします。しばらくするとこうした症状は改善しますが、しばらくは安静にして様子を慎重に観察する必要があります。なお、MRI検査などを行っても特に異常は確認できません。
慢性硬膜下血腫について
頭部に外傷を受けたことで硬膜下に少量の出血がじわじわ続き、血液が硬膜とくも膜の間にたまって血腫ができている状態です。時間経過により血腫が大きくなると脳への圧迫が強くなり、様々な症状を起こします。転倒などわかりやすい頭部外傷があって生じる場合もありますが、軽くぶつけた程度で生じるケースもあり、注意が必要です。
なお、高齢者や血液サラサラの薬を飲んでいる方、透析治療を受けている方、水頭症手術を経験した方は発症しやすい傾向があり、アルコールの大量摂取も発症に関与するとされています。
労災で受診される方へ
業務中や通勤途中にけがや病気になった場合、補償を受けられる保険制度が労災保険です。正社員だけでなく、パートやアルバイトも含め、全従業員が対象になります。
労災保険を使った治療を受けるためには、ご自分が勤務されている会社の労災担当者から必要な書類を受け取り、それを受診する医療機関に提出する必要があります。
※当院は、公務労災に対応していません。また、労災事故は、原則健康保険の対象外となります。あらかじめご了承ください。
必要な書類
労災で当院を受診される場合には、下記の書類が必要になります。必ずご持参ください。なお、緊急受診が必要なケースなどで書類がない場合には、一旦全額の自己負担でお支払いを頂いています。
当院が1つ目の医療機関の場合
けがや病気になったタイミング | 必要書類 |
---|---|
業務中 | 様式第5号 |
通勤中 | 様式第16号の3 |
当院が2つ目以降の
医療機関の場合
けがや病気になったタイミング | 必要書類 |
---|---|
業務中 | 様式第8号 |
通勤中 | 様式第16号の4 |
交通事故による
けがの場合
交通事故によるけがの受診では、自動車保険(任意保険)による支払いや加害者からの支払いとなり、原則として健康保険適用の対象外となっています。こうしたことから、交通事故によるけがで受診される場合には、ご来院された際に受付にその旨、お伝えください。
また、事前に加入されている保険会社に連絡し、当院を受診することを伝え、保険会社に当院への連絡を行うよう伝えてください。
なお、受診の際に保険会社から当院への連絡がまだない場合には、一旦全額を自費でお支払い頂いています。その後に保険会社からの連絡がありましたら、返金手続きを行っています。
第三者行為について
自転車同士がぶつかった、喧嘩をしたなどでけがをした場合、第三者行為とされます。第三者行為によるけがの治療を健康保険適用で受けることもできますが、その際には事前に加入されている保険組合に保険証使用の許可を受ける必要があります。この場合も、保険組合からの保険証使用許可の確認がなければ、一旦全額を自費でお支払い頂く必要があります。
頭部外傷がありましたら
当院までご相談ください
頭を打つなどの頭部外傷を受けたら、コブや出血などがなくても、脳がダメージを受けている可能性があります。頭部打撲では、受傷後は特に症状がなく、6時間以上経過してから深刻な症状が現れて脳にダメージが及んでいることが判明するケースもあります。頭を打った後は安静を保って経過を慎重に観察し、少しでも気になることがあれば脳神経外科専門医を受診して、脳の状態を確かめてもらうようお勧めしています。
当院では研鑽を積んだ脳神経外科専門医が診療を行っており、心身への負担が少ないMRI検査が可能です。造影剤を使わずに脳血管の状態を詳細に確かめることもできます。条件が合えば即日検査・結果説明も可能ですので、安心してご相談ください。