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認知症・物忘れ外来

認知症・物忘れ

高齢化が進むと共に、日本では認知症を発症する方も増加傾向にあります。
実際に、80代では、前半で20%以上、後半になると40%以上に認知症を発症しているとされています。認知機能の衰えや物忘れが若い頃に比べて増えたと中高年の多くの方が感じており、60歳を過ぎると認知症になるのではという不安感を持つ方が増加します。
認知症は原因によって症状を改善する治療が可能なケースがあり、それ以外の場合でも発症リスクを下げる予防法や進行を抑制する対処法がわかってきていますので、気になる症状がある場合や不安を感じる場合には、気軽にご相談ください。

認知症の診断について

早めに診断を
受けることが大切

認知症は、早期に発見して治療を開始することが重要な病気です。初期段階に治療を開始することで、進行を抑制できる可能性が高くなります。認知症は原因にアプローチする根本的な治癒は困難ですが、快適な生活をできるだけ長く保つためにも、「もしかしたら」と感じたら早めに受診しましょう。
認知症の半分以上がアルツハイマー型認知症ですが、認知症には脳血管性認知症や脳の病気から生じる認知症など、様々な疾患が含まれており、適した治療法も大きく異なります。
特に、脳の病気が原因で生じた認知症の場合、原因疾患が慢性硬膜下血腫や水頭症、脳腫瘍などの場合、手術などの治療を受けることで認知症の改善が期待できます。こうした原因を診断し、適切な治療につなげるためには、脳の精密な画像検査が不可欠です。

当院で行っている
認知症の検査

認知症の診断には下記の検査を必要に応じて行います。

  1. 日常生活障害の評価(患者様だけでなくご家族の問診も重要です)
  2. 認知知機能評価(MMSE、HDS-Rなど)
  3. 血液検査
  4. 画像診断(MRI・CT)
  5. メンタルチェック

問診の内容から判断し、最適な検査を組み合わせてご提案しています。認知症にはそれぞれ診断基準がありますので、それに従って診断しています。

①日常生活障害の評価
(患者様とご家族)

問診はどんな疾患でも重要ですが、認知症の診療ではご本人に加え、ご家族の問診も重要になっています。検査でははっきりとした異常が発見できない場合でも、ご本人やご家族の問診での情報が大きく役立つ場合もあります。

②認知機能評価
(MMSE、HDS-Rなど)

認知症の客観的な評価の正確性を高めるために、認知機能低下の早期発見に有効なHDS-R(長谷川式簡易知能評価スケール)や世界的に用いられている認知症スクリーニング検査のMMSE(Mini-Mental State Examination)など、複数の検査を行っています。また、認知症は症状の進行・変化を起こしやすい疾患ですので、こうした検査を定期的に受けることも重要です。

③血液検査

内分泌・代謝の問題によって認知機能低下が起こることがあり、それを確かめるために血液検査が有効です。こうした疾患の場合、適切な治療によって症状を改善できる可能性もあります。特に初期の認知症を疑われた場合には、血液検査をお勧めしています。

④画像診断(MRI)

脳萎縮や脳梗塞、脳動脈瘤など、様々な脳疾患の発見と状態の正確な把握が可能な検査です。特に、脳腫瘍、水頭症、慢性硬膜下血腫などが原因となって認知機能低下を起こしている場合、適切な治療によって認知機能の改善も期待できます。MRI検査など、頭部の精密な画像検査は、脳卒中のリスク判断などにも有効であり、発症の予防にも役立ちます。

MRI検査

⑤メンタルチェック

メンタルに問題があって認知症と共通した症状を起こすことがあり、認知症診断のためにメンタルチェックが必要になる場合もあります。当院では、患者様の状態や症状などに合わせたメンタルチェックを行い、精神状態の評価を行っています。

認知症の症状の2つの側面

認知症は、物忘れ以外にも様々な症状を起こします。症状には、中核症状と周辺症状に大きく分けられます。症状の内容や現れ方、程度にも幅広く、生活に大きな影響を与えます。
中核症状は、記憶障害や判断力・思考力の低下、認識障害、実行機能障害などがあり、認知症のタイプや障害される脳の領域により現れ方が異なります。
周辺症状には、不眠、無気力、興奮、妄想、暴言、暴力、幻覚、徘徊、抑うつ症状などがあります。こうした症状は、患者様の生活や性質、環境、人間関係などの影響を受けることから、多彩な現れ方をします。

当院における「認知症」治療

  • 中核症状や周辺症状、患者様の状態などにきめ細かく合わせた薬の処方を行っています。
  • 患者様ご本人と、ご家族に寄り添い、不安をできるだけ解消して、状態やお気持ちを改善できる方法を一緒に考えていきます。
  • 当院には医療相談員が常駐し、様々な相談に親身に対応しています。ショートステイやデイサービス、施設のコーディネートなど、日常生活に対する不安を解消するためのサポートも行っています。
  • 外科治療が必要な慢性硬膜下血腫や正常圧水頭症などの場合には、連携している高度医療機関をご紹介し、安心してスムーズに手術を受けていただけるようにしています。また、退院後のフォローアップも当院で受けて頂けます。

認知症改善のために
大切なこと

認知症治療は多くの場合、治癒を目指すのではなく、進行予防や日常生活をできるだけ快適に送ることを目的に行われます。

  • 認知症が悪化するのを防ぐ
  • 認知症における周辺症状を抑える

上記の2点を重視した治療が重要です。

日本では現在、複数の抗認知症薬が利用できますが、それぞれの薬にはメリットとデメリットがあります。患者様の認知機能の状態や全身状態、環境などに合わせた薬の選択が重要になります。また、メンタルへ影響を及ぼす可能性もありますので、経過を慎重に観察する必要もあります。
周辺症状がある場合には症状の内容や程度に合わせて、神経伝達に関与する薬、抗うつ薬、抗精神薬、漢方薬、睡眠薬などが処方されることがあります。なお、薬の副作用として認知機能低下を起こす可能性もありますので、こうした薬の処方に関しても慎重な経過観察が重要になります。
認知症の進行抑制や、周辺症状の予防や改善には、ご家族をはじめとした周囲の方との関係を保ち、社会的なつながりを持つことが大きく役立ちます。様々なサービスを利用することで、そうした機会を積極的に作ることができます。

認知症は予防できる

現在、認知症を完治させる治療はまだありません。ただし、認知症発症のリスク要因についての研究が進んでおり、有効な予防法もわかってきています。認知症の発症には、遺伝や教育環境が関与すると考えられていますが、生活習慣の影響も大きいとされています。栄養バランスの良い食事、規則的な生活、習慣的に行う運動、良質な睡眠と十分な休息、社会的なつながり、脳の活性化など、認知症発症予防や進行抑制効果を期待できる生活習慣の改善を心がけましょう。
当院では総合的な認知症診断と治療に加え、医療相談を行っており、認知症に対する不安がある場合の相談も可能です。気軽にご来院ください。

MCI外来を行っております

診察室令和6年にアルツハイマー型認知症の原因タンパク質であるアミロイドベータ(Aβ)を脳内から除去する新薬(レケンビ)が開発されました。当院では大学病院と連携し、この薬の適用となる早期認知症の患者様の治療を開始しております。認知症もいよいよ治る病気となる時代が近づいてきました。